「今日「日本主義」と言われているものは、現代の国際情勢のうちに日本を位置づけようとするときに出てくる情勢論的思想で、マルクス主義と「背腹」の関係にある。それは、「文明開化主義」つまり近代化の「終末現象」であるマルクス主義の裏かえし、「編輯がえ」にすぎないからだ。それに対して日本浪漫派は、歴史的に見れば、「明治以降の文明開化史の最終段階」であったマルクス主義文芸運動から引き出された自覚的な「結論」、つまり文明開化主義の全面的否定なのであり、「次の曙への夜の橋であったともいへる」ものなのだ。」（木田元『なにもかも小林秀雄に教わった』文春新書2008年、p.222）