「負い目とか個人的債務とかいう感情は、・・・その起原を存在するかぎりの最も古い原始的な個人関係のうちに、すなわち、買手と売手、債権者と債務者の間の関係のうちにもっている。・・・値を附ける、価値を量る、等価物を案出し、交換する―これらのことは、人間の最も原初的な思惟を先入主として支配しており、従ってある意味では思惟そのものになっているほどだ。」(ニーチェ『道徳の系譜』岩波文庫2010年改版、pp.102-103)
人間の文明というのは、返済不可能な絶対贈与の領域に、合理的な計算や清算可能な等価交換の領域を拡大していくことだった。