「〔経済〕成長を取り戻す」という妄想
「マルクスが言うのは‥‥労働者は「商品の買い手」つまり消費者としての役割を期待されているが、彼が賃金として受け取るのは、自らが生産した「付加価値」の一部だけであり、生産された商品の総額に比べればきわめて限定された購買力しかもっていない。
彼は「消費欲望」はもっているのだが、自分の労働力の価格(賃金)は、欲望の対象を買いそろえるには十分ではない。したがって、資本主義的生産様式が支配的になり、人口の大部分が労働者となった社会では、生産力(供給能力)と購買力(有効需要)との落差が「過剰生産」という結果を生む、ということである。
そのような「資本主義社会」で拡大再生産が継続的に行われるのだとしたら「たえず増大する需要は何所から生ずるか?」それがルクセンブルクの疑問だった。しかし『資本論』はそれに答えていない。」(植村邦彦『ローザの子供たち、あるいは資本主義の不可能性』平凡社2016年、p.23)