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「‥現状に満足できない知識人の特徴はメランコリーである。憂鬱者は行動しない。活動、労働、仕事、勤勉、前進などなどの近代資本主義の日常エトスとは無縁である。遅疑逡巡、決定不能、「アクチュアリティ」のゆえに、どの選択肢も棄てられないし、どの選択肢も不満である。それを取りまく生命なき地球というアレゴリー。

だが、重要なのは、そこにベンヤミンが近代のひとつのチャンスを見ようとしていることである。つまり、生命を抜かれた物質という、意味とは異質で無縁な存在が浮かび上がってくるというチャンスを。
同時にそれは、物質としての自然がそれとして解き放たれる条件、すなわち唯物論が成立する基盤でもあると考えられている。‥デューラーの銅版画‥ふさぎ込んでいるメランコリアは、それぞれ世界の脱魔術化の手段である観測器具などの小道具に意味を与えながら、まさにそれが神々の道具でないことを、死んだ自然であり、しかも人間世界と深く交わっていて、この世界とやっていかねばならない自然であることを分からせてくれる。「救い出す」とはそういうことなのだ‥。」 (三島憲一『ベンヤミン』岩波現代文庫2019年、pp.262-263)

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