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[見田]「キャラバンサライとは、ユーラシア大陸を西に東に往来した隊商(キャラバン)たちが、幾日か幾週間かの宿として共に過ごした、ペトラやボスラやパルミュラなどの「隊商都市」です。サンタナはそれを、人間の<自我>というものが、輪廻転生する生命も永遠のキャラバンの一夜の宿であるとする、インドの思想を表現する具象として演奏しています。それは科学的であるどころか、思いっきり反対の、<文学的>な表象であると、しかも非科学的なインドの「神秘思想」じゃないかと、読者は思うかもしれません。しかし現代の生物科学の成果の示すところでは、「わたし」という自我、つまり個体は、幾十億年という地球の歴史を生きつづけ、増殖をくりかえしている無数の遺伝子たちがひしめき、せめぎ合い、共生して助け合いながら集合して、一夜の宿を共にしている「都市」のような存在なのです。「自我という都市」というイメージですね。」(柄谷行人、見田宗介、大澤真幸『戦後思想の到達点』NHK出版2019年、pp.180-81

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