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「礼の核心に供犠があることの意味は極めて重要である。その一つとして、礼を支えているのは、交換ではなく贈与であるということが挙げられる。エコノミーの体制である以上、礼には価値と意味の適切な交換が要求されるが、その一方で、礼には交換の原則をはみ出し、見返りのない贈与を行う可能性がある。無論、通常の場合、礼の中で行われる犠牲という贈与は、礼という体制を支える大きな見返りを予想していて、交換としっかり結びついている。しかし、礼それ自体が問われる瞬間(それは実は「常に」である)、贈与は交換との結びつきを離れ、その原初的な姿を示し、礼が、見返りを期待しない振る舞いを予想するものであることを明かす。
だからこそ、礼は、生物としての人間が抱えている、交換に還元できない様々なあり方に深く関わる。すなわち、礼は、食べること、殺すこと、そして死に深く関わっている。ここから礼のもう一つの重要な意味が出てくる。それは交換とは異なる仕方で他者の関わる際に、「正しく」関わらなければならないとする、倫理というよりは、倫理性を問う方位である。」(中島隆博『悪の哲学』筑摩選書2012年、p.120

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