ボルヘス「伝奇集」(鼓直訳、岩波文庫)はことさらゆっくりよんでいます。今、3つめの文章をよみはじめたところ。ひとつめはウクバールという国と、トレーンという惑星(?)についての文献探索とそこから見えてきた「事実」。小アジア半島にあるらしい国、トレーンについては「アングロ・アメリカ百科事典」の同じ版であっても、記載がある冊子とない冊子がある。そして、名詞のない言語をつかう唯心論者の惑星(?)トレーン。そこではスピノザの哲学もちがうものになります。ふたつめの文章は、ボンベイ市で生まれ育った人による最初の探偵小説の批評でしょうか。そのなんとも不思議で魅力を感じる概要が、これまた論理的で厳密性まで感じる文章で紹介されます。緻密にでも大胆につくられた世界を、論文あるいは手記、批評文という形式ででも散文のようにも感じる文章で表現された作品は、ぼくにとっては初めてであり、衝撃でもあり、小躍りしたくなる幸せを感じています。