はたと正体に気付いてしまった。前半で中継されていた場所が、一切出てこないのだ。例年であれば、年越しの前後で同じ場所をピックアップして放送しているのに、まったく見当違いというか、目新しい寺社仏閣ばかりが映し出される。
それだけではない。さっきまでと明確に異なる点があった。アナウンサーのメンツだ。テレビの画面に映っている女子アナは、2022年、つまり「ゆく年」の夏頃に局を退社し、フリーになっているはずだった。そして前半の中継は、彼女ではなかった。
混乱する俺をよそに、番組の放送が終わりに差し掛かる。アナウンサーの口から放たれた掛け声に、俺は耳を疑った。
「2022年、皆さんにとってよい1年となりますように!」
余計な時空まで飛び越えたことに心底後悔しながら今年(再)を過ごした事は言うまでもないだろう。
やっと会えたね、2023年。