毎年の大晦日は「ゆく年くる年」を見ながら過ごすのが恒例だ。このしんみりとした雰囲気が何となく好きなのだ。どこかのお寺からにこやかに中継するアナウンサー。その背後には一目テレビに映ってやろうとおちゃらる連中がたくさんいる。ふと、彼らのようにはっちゃけてみるのも悪くないと思った。

23:59:59、日付の変わる瞬間、俺は「飛ん」だ。ベタベタなネタである。だがこの瞬間、俺は確かに「地球からいなくなっ」てしまった。人間の跳躍力で宙に留まっていられるのなんて、せいぜい1秒がいいところだ。予想した通りに、俺は床に着地した。なんて事はない。

ふと、違和感を覚えた。テレビでは相変わらず「ゆく年くる年」が、新年を迎えた各地の様子を中継している。放送は23:45に始まり0:15に終わる。いつものパターンだから既視感があるのも当たり前と最初は思っていた。だが、どうも何か変だ。なんとなく、繋がっていないような気がする。

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はたと正体に気付いてしまった。前半で中継されていた場所が、一切出てこないのだ。例年であれば、年越しの前後で同じ場所をピックアップして放送しているのに、まったく見当違いというか、目新しい寺社仏閣ばかりが映し出される。

それだけではない。さっきまでと明確に異なる点があった。アナウンサーのメンツだ。テレビの画面に映っている女子アナは、2022年、つまり「ゆく年」の夏頃に局を退社し、フリーになっているはずだった。そして前半の中継は、彼女ではなかった。

混乱する俺をよそに、番組の放送が終わりに差し掛かる。アナウンサーの口から放たれた掛け声に、俺は耳を疑った。

「2022年、皆さんにとってよい1年となりますように!」

余計な時空まで飛び越えたことに心底後悔しながら今年(再)を過ごした事は言うまでもないだろう。

やっと会えたね、2023年。

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