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『オリーブの林をぬけて』(①) 

『オリーブの林をぬけて』は、映画を撮るという映画で、『そして人生はつづく』のなかのワンシーンを苦労しながら撮っていて、『そして人生はつづく』の方では短い時間で見たシーンでありながら、『オリーブの林をぬけて』では、いろいろと撮影にいたるまでにも問題があるし、撮影してても台詞がうまく言えなくて何度も撮り直しになったりしているので、『そして人生はつづく』の映画の外の現実はこんなふうなのだろうという思いに駆られてしまう。
しかし実際は、台詞がうまく言えなくて何度も撮り直しになるという新たな脚本があって、そこでの台詞が上手く言えないという台詞をうまく言えた結果の映像を見ているはずなのである。

『オリーブの林をぬけて』(②) 

『オリーブの林をぬけて』の映画のなかでは、親戚が65人亡くなったというのをホセインが言えなくて25人と言ってしまったり、タヘレがホセインのことをホセインさんと言えなくてホセインと言ってしまったりして、そこで何度もカットがかかる。そして、監督役の俳優が、「カット」と言って、「65人と言うんだ」とか、「何回言ったら分かるんだ」とか言っていくわけだが、実際には『オリーブの林をぬけて』のそのシーンを撮るときに、監督のキアロスタミが「カット!」と言って、「『65人と言ってください』じゃなくて『65人と言うんだ』の方がいいだろう、もう一度!」といった調子でおそらく言ってるはずなのである。でもそういう入れ子の入れ子が想像しづらくて、映画のなかで映画を撮っているこの映画が、シナリオ通りの映画というよりは、ドキュメンタリーではないにしてもドキュメンタリーふうのそれに近いものに見えてしまうのではないだろうか。

『オリーブの林をぬけて』(③) 

一般には、映画とかテレビドラマは、台詞のやりとりがスムーズに行われていくが、キアロスタミの映画では、言い間違いとか、聞き間違いとか、聞こえてないとか、聞いてないとか、行動にしてもうまく行かなくて何回もやり直すとか、そういうのがお構いなしに繰り返されるので、そのために、素朴で自然な感じが増した映像になるのだろう。

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