彩瀬まる 著『骨を彩る』を読んだ。
病気や死別や家庭の事情などの、自分ではどうしようもない問題が降りかかってきた人、知らなくてもいい苦労を知ってしまった人がこの作品には多く登場する。
その苦労の形は人それぞれで、一口には言えない感情が渦巻いていた。
でも読んでいて苦痛ではない。おそらく誰しもが感じたことのあるような馴染み深い感情だから。
人間の複雑さがよく書かれているところが良かった。生きていれば色々あるのが楽しくて苦しい。
他者に見せている顔が人間の全てではなくて、別の顔だってきっと内側に持っている。心には普段は守っている柔らかい部分もあり、消化できないものの一つや二つは持っているのだろうと思った。それは別に悪いことではない。
立っていられない自分を、強がりや逃避で支えることだって時には必要。とことん自分を守って、そこから自分を解き放つのも自分しかいない。でも他者とのコミュニケーションのなかでそのきっかけを見つけられるかもしれない。
現実はそんなに上手くはいかないかもしれないけれど、生きていくことに希望は持っていたいと思わせてくれる物語だった。
みんなが初めての人生を送っているのだと当たり前のことを思った。