『死にたくなったら電話して』(李龍徳 著)
この印象的なタイトルに惹かれて購入した小説。
きっとたぶん人間の内面を繊細に書いたような話だろうと思い込んで読み始めたら、まぁそれも間違いではないけれど、もっと強烈なインパクトのある話だったから驚いた。
浪人生の主人公が、バイト仲間と行ったキャバクラで悪女に出会ってしまうところから物語は始まる。
私は主人公よりもそのキャバ嬢のことが気になって仕方がない。「悪女」と書くのが分かりやすいけれど個人的には悪女とは思っていなくて、それどころか最後まで読んでみても彼女は何も悪くない気がしているので始末に負えない。破滅的だからこそ好きにならずにはいられないのだ。
彼女の口から出てくるのはいつでも自信たっぷりの正論で、思わず何もかも肯定してしまうような説得力がある。関西弁との相性もよく、彼女の淀みない喋りに快さすらおぼえてしまう自分がいた。
ただ、彼女の意見を全面的に支持した先には何があるのか、それを突き付けられて読み手もほとんど主人公と同じような状態に陥る。
例えば何にも希望が持てない時、精神的に落ち込んでいるような時には読んではいけない。それくらい、誘い込む力を持つ小説だった。