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村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は先が読めない物語ばかりの短篇集だった。
魔法のコンパクトで変身して理不尽を乗り切る会社員の日常を描いた表題作ほか、初恋の人を監禁する話、性別禁止の学校の話、流行によって変容する人々の話、合計四篇が収録されている。

最も好みなのは表題作だった。
自分は魔法少女であるという設定を小学生の時から27年続けている主人公が、意外に現実的で冷静であるところはなんだか好感が持ててしまい、大人になったからといって別に心の中の純粋な部分を葬り去る必要はないと思った。
誰にも迷惑をかけずに日常を楽しくする妄想ならば問題などないのである。

何も分からなくて最高だったのはラストの『変容』という話。
流行や時代の空気は目まぐるしく変わっていくものだけれど、もし自分がそこについて行けなくなったら……と考える瞬間はある。柔軟になれたらもっと楽に生きられる場面というのは多々あるし、新しいものを受け入れられなくなるのは怖い。
『変容』はそんなことを考えさせられる物語で、人格とは何か、個性とは何か、確かなことが分からなくなる。
常識が崩されて拠り所がなくなるような感覚になるので、読後はむしろ解放感がある。

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