津原泰水『11 eleven』読了。
SFやホラー、幻想文学など11作品の短編集で、どれも個性豊かで濃厚な綺譚だった。
読者の好みによるかもしれないけれど、特殊な設定もスッと受け入れやすく、流れるような文章が読みやすい。
風変わりな人物も多く出てくるけれど「こういう人いる!」と思わせる何かがあって、理解はできなくても嫌いになれない。
登場人物の誰も共感を求めていない、悲劇は悲劇のままそこにあり、必要以上に訴えかけてこないところが好みだった。
どの作品も良かったのでどれかを選ぶのは迷うけれど、特に印象に残ったのは5作品。
・見世物を生業にしている一座の話「五色の舟」
・好奇心によって人生が変わってしまう女子中学生の話「手」
・ひょんな事から大型犬を飼うことになった話「クラーケン」
・黄金比の美しさを持つ女をめぐる「YYとその身幹」
・戦争文学「土の枕」
「土の枕」は毛色が異なり、戦争を機に大きく人生が変わった男の話。凝縮された迫力のある話だと思ったら、著者の母方の血筋の実話を元にしているとのことで更に驚いた。
混乱していた時期ならあり得る話なのかもしれない。短編ではなく長編でもっと読んでみたいような作品だった。