ヘルマン・ヘッセ『人は成熟するにつれて若くなる』読了。(編者 フォルカー・ミヒェルス/訳者 岡田朝雄)
老いや死を奥深く見つめたエッセイと詩。
そこに写真が加えられ、どんな生き方をしていたかが一目で分かるようになっていた。

息子のマルティーンが撮影したという写真の中の著者が、どれだけいい表情と佇まいをしているか。眺めてしみじみしてしまった。
庭仕事、菜園での焚き火、庭から望める湖や山の様子が長閑でじんわりと心を温める。

老人の品位についての話が興味深かった。
人はどの段階でも使命があるという。たとえ死の間際でもやるべきことがあるという考え方。
これは実際かなり難しいかもしれない。老いと共に忍耐を学び落ち着きを身につけ、前向きな喜びとユーモアを忘れず、傾ける耳と静かな目を持ち続ける。そんな成熟した人間になれるだろうか?
けれど著者はそれを体現しているように見えるのだ。

詩には人生が詰まっていた。
輝かしい青年時代を見送り、咲き誇った花も散るときが来るという感覚。そして巡る命の喜びをも感じさせる。
春から冬へ向かう季節と共に、老いを受け入れ使命をまっとうする姿は、きっとこれから生きていく上での支えになると思った。

soshisha.com/book_search/detai

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あれもこれも引用したくて迷うけれど、詩のひとつを抜粋。 

「枯葉」

どの花も実を結ぼうとする
どの朝も夕暮になろうとする
変転と時の流れのほかに
永遠なものはこの世にはない

この上なく美しい夏もいつかは
秋のおとろえを感じようとする
木の葉よ がまん強くじっとしていよ
風がおまえをさらおうとしても

おまえの遊びを遊べ さからうな
しずかになすがままにまかせよ
おまえを吹きちぎる風のままに
吹き飛ばされて家に帰るがよい

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