最果タヒ『星か獣になる季節』読了。
不思議な小説だった。
印象的な文章が沢山ある。なにかすごく大切なことが書いてある気がして引っかかるのに、この感覚をなんて言葉にしたらいいか分からない。そんな感じ。

主人公は、地下アイドルを応援している17歳の男子高校生。その地下アイドルが、殺人を犯した容疑を受けたことから始まる物語。
高校生活、青春真っ盛りには違いないのだけれど、爽やかな青春ではなくて、行き先も分からず傷つけ合う青春。
そして物騒な話になっていく。

地下アイドルに求めていることがひどく歪んでいて言葉を失ったけれど、それは主人公だけじゃなかった。
読み進めるほど、人が人に対して求めていることがどんどん浮き彫りになっていった。対象や程度が違うだけで、みんな同じようなことをして自分の居場所を作ろうとしている。
それは現実の私たちも見覚えのある17歳の姿だろうと思う。

後半からは、登場人物が19歳になって追想し、現実と向き合う話になってくる。
何か答えを欲してしまうけれど、きっと答えなんか存在しなくて、何も分からないままみんなここを通っていくものなのかもしれない。
うまく言語化できない青春のモヤモヤが詰まっていた。

chikumashobo.co.jp/product/978

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ドキッとした箇所抜粋。 

"誰にもばかにされない、みんなが好意を抱く人間と、なかよくできるというのは、とても安心があった。こんなふうな人に、なりたいとは思わない。森下は笑うと眉をくしゃっと寄せて、少しくすぐったそうにする。その様子は本当に、子どもみたいだったし、笑ったり驚いたり、大きな声をあげることに対して不安を抱いたことがないのだろうとわかる。ぼくはこんな人にはなりたくなくて、彼が本当はどんな孤独や嫌悪をいだいているかなんて知りたくなくて、森下のことを、ただひたすらいいやつだと思い込んでいる彼のばかな友人になってみたかった。"

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