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一木けい『悪と無垢』読了。
好みが分かれるかもしれないけれど私は面白かった!
悪女が出てくるということしか知らず、二話目あたりまでは、不倫を題材にした短編集なのかしら?!と思っていたら違った。
先が気になってあっという間に読み終えた。

人間関係において「知らない方が幸せ」みたいなことって幾つかある。人の裏側とか秘密とか、暴かれるのを見ても良い気持ちにはならない。
この本はその「知らない方が幸せ」なことが山ほど出てくるので、話が進む度に驚いたり引いたり怯えたり。人間は怖い。

この物語の中心にいるのは、魅力的な容姿を持ち無邪気に嘘を吐き、華麗に優雅に他人を騙す女。しかも弱みを握って人を操ることに長けている。
そんなサイコパスに人生を狂わされた周囲の人たちが、その体験を語っている。

純粋な悪意に理由などなく、ホラーかな?と思うくらいゾッとしたシーンもある。
その異常性を語るだけではなく親と子の話でもあったのが良い点だった。特にラストが良い。

話が入り組んでいるので、時系列や人物などその都度しっかり把握・理解して読んでいく必要がある本だった。
メモしながら読んでいて良かった!伏線や繋がりが分かるとスッキリ楽しめた。

kadokawa.co.jp/product/3221080

登場人物の一人である作家がいいことを言っていた。本文より抜粋。 

" わたしが最も心をゆるしているのは小説だ。人には気持を吐き出せる何かが必要なのだと思う。それが人間である必要はない。
パソコンをひらき、大きく息を吸った。
考えたくないことを考えずに済む小説を書こう。もしくはとことん考え抜く小説を。居場所や理解者を物語のなかに求めたっていいはずだ。"

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