川上未映子『夏物語』読了。
何度も泣いてしまった!
現実に生きている沢山の女性たちの気持ちを拾い上げてくれたような本で、何もかもリアルに感じた。
第一部は『乳と卵』の改稿版。第二部はそれから八年後、主人公が三十八歳になり「自分の子どもに会いたい」と考えるようになるお話。独身で恋人無し。精子提供が視野に入ってくる。
年齢的にやはり妊娠出産にはリミットがある。
日々確実に老いていく体を感じながらも、まだ存在すらしていない子どものことを考えるというのは、つらくて答えの出ない問題。
子どもを産むことについて様々な意見が語られるが、どの意見も分かるような気がするし、尊重したい。
女性の登場人物たちがみんな実在しているみたいに立場の違いがあった。 同性で似たような境遇であったとしても同じ人生はひとつもないことが、丁寧に書かれた人物描写でよく分かった。
どうしても女の役割みたいなものについて考えさせられた。でも、やりたくないことはやらなくていい、そう強く思うし周りにも言いたい。
自分のために生きるって何だろう。
奮い立たせるようなセリフから、現実を突きつける言葉まで、マーカーだらけになった。この本をお守り代わりにしたい。
ハッとする文章が沢山ある。二箇所抜粋。
"たとえば、言葉って通じますよね。でも、話が通じることってじつはなかなかないんです。言葉は通じても、話が通じない。だいたいの問題はこれだと思います。わたしたち、言葉は通じても話が通じない世界に生きてるんです、みんな。"
"子どもが欲しいというとき、人は何を欲しがっていることになるのだろう。「好きな人の子どもが欲しい」はよくある説明だけれど、では「相手の子どもがほしい」と「わたしの子どもが欲しい」のこのふたつに、いったいどんな違いがあるだろう。だいたい、子どもをもつ人がみんな、あらかじめ子どもをもつということについてわたし以上の何かを知っているのだろうか。わたしにはない資格のようなものを、みんながもっているのだろうか——"