横溝正史『仮面舞踏会』読了。
私立探偵の金田一耕助シリーズ。
このシリーズといえば、個人的にはどうしても『八つ墓村』や『犬神家の一族』などの田舎の因習を書いた作品の印象が強いが、以前読んだ『悪魔が来りて笛を吹く』という元華族を題材にした話も強く印象に残っていて、本作も元華族が登場するため期待して読んだ。
練りに練られているというのが読後すぐの感想。
戦前から戦後にかけてを背景にしたストーリーも良く、細かい伏線もきっちり回収。頭の中で事件や人が繋がっていくのが爽快だった。
登場人物が結構多いのに(60人超え!)不必要な人物は居ない。この広がりや人々の個性が物語に深みを持たせていると思った。みんなそれぞれに感情があり、いきいきとした一人一人の人間だというのが伝わってくる。
セリフに味があるし、人間の複雑な心の内を読むのはやはり面白い。
軽井沢の別荘地を舞台にしていて、登場するのは自然と何かしらの成功をおさめている人物が多いわけだが、だからこそこのような事件になっている点も興味深く、同時にひどく虚しかった。
みんな何かの隠し事をしているように思えて、主要人物は全員怪しく見える。明かされるまで犯人は分からなかった!