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『ずっとお城で暮らしてる』
シャーリイ・ジャクスン 著
市田泉 訳

村人たちから忌み嫌われる資産家一族の生き残り、少女メリキャットと姉のコニーと伯父のジュリアン。
大きなお屋敷と広大な土地で小さく暮らしている、この慎ましい家族を私は嫌いにはなれない。
台所の手仕事や行き届いた掃除、自然の広がる庭や畑、小川のほとりの秘密の隠れ家、飼い猫ジョナスとの時間。日課をこなし3人と1匹の奇妙なバランスで成り立つこの穏やかな生活は、メリキャットの目を通して見ると愛おしくてたまらなかった。いつもなら他の登場人物目線も気になるところだが、この本は彼女の目に映るものがすべてだと思いたい。

善良の皮をかぶった人間は大勢いて、集団は理性を失わせることがある。弱者の目線に立ったこの物語の容赦の無さに取り込まれ、怯えや絶望、次第に燃えるような怒りに包まれていった。
すぐに読み返して言葉を反芻しているうちに、この本の中から一生出たくないと思えてきた。優しく美しい姉と朽ち果てるまで共にいられたら、それだけで幸せではないか?
パラパラとページを戻って読むと全体の見え方がまた違ってくるのも面白く、真実に向き合って胸が締め付けられる。
そんな中毒性のある恐怖小説だった。

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