川越宗一 著『熱源』読了。
樺太(サハリン)を舞台に、アイヌの文化をめぐる人々の熱意に満ちた歴史小説。
文化人類学者のブロニスワフ・ピウスツキの人生が壮絶だった。ロシア皇帝暗殺を謀った罪でサハリンに流刑となったことが、冒頭の登場人物一覧で紹介されている。流刑地での囚人生活や調査研究に没頭し原住民と関わった日々は過去の出来事であり命はいつか終わるけれど、その証は残っていると信じたくなるような物語となっている。
故郷、言語、アイデンティティ。国と国が勝手に始めた戦争の板挟みになり、大切なものが次々と奪われていく理不尽さに胸が痛んだ。
地球上のどこに誰から生まれどんな文化を持っていてもそこに優劣はないというメッセージが、一冊を通して強く描かれている。国籍や人種などに関係なく、ただ目の前の人を見ることの重要性がもっと広がっていけばいいなと思う。
終章で書かれた出会いには引き込まれた。命令を受けて殺し合うのは血の通った人間同士であることを今改めて認識すべきだと感じる。
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