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おはようございます。
「幻視百景」30回より

文明が崩壊しかけているせいで言葉も…という訳ではなさそうだ。

腐った赤ん坊につきまとわれたり、ひどい扱いを受けたホームレスの呪いで街中に災禍が起きたり、街のあちこちにいる死んだ子どもたちを見てみぬ振りをして暮らしたり、カリスマ的ロックスターの死骸をファンが掘り返して貪ったり――
中でも凄まじかったのが、「どこにあるの、心臓」。異常のある心臓の音に取り憑かれた女性が、知り合った心臓病男性の鼓動を薬や酒でさらに異常にして心音を聴き続けるという…。「戻ってくる子供たち」は、失踪した子供たちが一斉に戻ってくるが…という街で起きる「ソラリス」でよかったです(作中〝日本人は、死んだあとに魂が行く場所はスペースが限られていると信じている。いよいよ限界が来てそれ以上入りきれなくなると、魂はこの世に戻ってき始める。〟という会話が出てくるんですが――それは日本人というか、黒沢清の『回路』なんでは……! とちょっと笑った)。

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マリアーナ・エンリケス著 宮崎真紀訳『寝煙草の危険』(国書刊行会)、すごくよかった。『兎の島』に続くスパニッシュ・ホラー文芸第二弾で、今回も川名潤さんの装丁が素晴らしい。言葉がすっと裡に入ってきたと思うと蠢きだすような読み味で、短い話も多く次々と貪ってしまう。恐ろしさのなかにおかしみもあり、女性の主体的な性、アルゼンチンの過去や社会状況の超自然的な反映、顔を背けたくなるにおい、などが印象的な一冊でした。

どの作品も他にない読み味で素晴らしいんですよね。

書斎の日差しが強くなってきて、まだ体が慣れない…

大阪市立自然史博物館、ナガス鯨の全身骨格が、建物の骨格も相まってすごかった。

こんな買うしかない図録作られたら困りますな(毒展に行きました)。

シャネル・ベンツ著 高山真由美訳『おれの眼を撃った男は死んだ』(東京創元社)が文庫で読めるなんて。印象的なタイトルは「死を悼む人々」という短篇のセリフから。コーマック・マッカーシーにも通じる家族や暴力や奴隷制などを題材とした短編集で、すばらしいです。解説は杉江松恋さん。

十六世紀のイギリスの修道院から、西部開拓時代や奴隷制度下のアメリカ、現代の家族、近未来? など時代も場所も様々で、当時書かれた手記という体裁の作品がいくつかあるのも面白い。例えば、「アデラ 1) 最初は"黒い航海"として知られ、後に"心臓という赤い小箱"として再版された物語 一八二九年、作者不詳」

『ビリー・ザ・キッド全仕事』を思わせる詩的な文体で書かれた兄妹の強盗の顛末「よくある西部の物語」、『地下鉄道』や『キンドレッド』の緊迫感で奴隷制を描く「オリンダ・トマスの人生における非凡な出来事の奇妙な記録」、時系列を前後して描かれる「外交官の娘」(何度か読み直した)、偽医療で癌だった母を死なせた病院へ亡くなったはずの妹と共に復讐にいく「蜻蛉」、砂漠に埋もれたコミュニティの遺跡を自らの過去とともに発掘する「認識」など、どれも印象的でした。

だいぶ前に買ってたのですが、本に埋もれて読めなくなっていた。

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小田雅久仁さんの『禍』(新潮社)、一足早くプルーフで読ませていただいたのですが、むちゃくちゃ面白かった。とんでもない奇想の数々に呑まれてどこまでいくんだと気が遠くなりつつ読むのが止まらない作品集。7月12日頃発売だそうです。

冒頭の「食書」は、本の頁を食べるなりその内容を現実として体感する話ですが、どの短篇も正に食書のように体感されて、怖気と笑いに掻き回される。
特に好きだったのは、「耳もぐり」「柔らかなところへ帰る」「農場」

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