「アホウドリの迷信」という短編を忘れられない方は少なくないと思いますが、その著者デイジー・ジョンソンの長編『九月と七月の姉妹』(市田泉訳 東京創元社)が刊行されたんです。暴風みたいな姉のセプテンバーとそれに振り回される内気な妹ジュライとの分かちがたい関係が、ジュライの跳ね回るような言葉で生き生きと不穏に描かれていて、すごくいいです。読んでるうちにかすかに、すこしずつ違和感が増していく手際も見事。依存からの開放の物語でもある。『ずっとお城で暮らしてる』や『悪童日記』なども連想しました。印象的な装画は榎本マリコさん、装幀は岡本歌織さん。