イバン・レピラ 白川貴子訳『深い穴に落ちてしまった』(創元推理文庫)、うわー、すばらしかった。タイトル通りというか、それ以外にはなにひとつ判らない極限状況で、兄弟が虫や木の根を食べつつ生き延びようとするが、しだいに幻覚など現れだし――
もしアゴタ・クリストフが「火垂るの墓」の後半を書いたら、という雰囲気も。弟が謎言語を話しだしたり、章番号が素数だったり、暗号が仕込まれていたり、と謎めいた仕掛けや暗喩に満ちた哲学的な寓話。ようやく捕まえた鳥をどうするのかという場面、その発想はなかった…。
解説は西崎憲さん。4月28日頃発売。