買い直したマスターキートンを少しずつ読んでいる。冷戦が終わりつつある時代、湾岸戦争があった時代、いまだ太平洋戦争の記憶が残っていた時代、しかしバブル直後でまだジャパン・アズ・ナンバーワンの匂いが残っていた時代。当時の社会情勢をリアルに書き込んだはずの作品は、いまや歴史の教科書になってしまったかのようです。
高校生の時に感じた重厚さと面白さは現役の漫画としてまだまだ通用するレベルで、重厚さだけでなくストーリーテリングの妙も読み物としての価値を高めている。この時代の作品がこういう作りを好んでいたのか、ブラックジャックにも通じるような構成が多い。つまり物語を最後まで書き終わらずに余韻を読ませる作り。
人情話も多い。泣かせるポイントは、いずれも許しと再生の話であるように思われる。喪失の話もないではないが、ある種のペーソスがいつもあって読後に色味が渋く残る陰影が漂う。あのイケイケの時代に衰退と回復の話がかけたのは、脚本家が欧州の没落を見ていたからか、あるいは考古学をモチーフとした数多くの話の中に歴史の隆盛を見ていたからか。
仕事の合間にちょっとずつ読んでます。