さてこの論文が言いたいのは、日本が翻訳による技術の体系化によって工業製品の製造を爆発的に高め、それが経済的な発展を遂げたとするもの。日本人が技術書を読めたことが大きいとするのですね。ここから先の理屈は経済学なのでよく分からない。しかし、ある集団が技術力を高めるためには知識の民主化が必要で、そのためには日本語で書かれた技術書、その基盤には日本語に翻訳された技術用語がたくさんあったということは間違いがない。
この知識の民主化が日本語によって行われたということは、重要なポイントだと思う。かつて水村美苗が『日本語が滅びるとき』で書いたように、近代的な日本は近代的な日本語を構築することによって得られたという見通しは大筋として正しいと思う。(3/4)