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私が専門としている日本語学というジャンルは、言葉そのものを独立した対象として観察するという手法が主流です。しかし言葉は常にそれを使う人や社会、文化、アイデンティティと密接に関わるので、言葉を独立して論じることに批判もないわけではありません。そうした立場によるひとつの学問のあり方に、社会に積極的に関わろうとしたり、さらには社会を変える運動を内包するものがあります。それは学問的ではないと言われることもあるけれど、そのような動的な要素も学問の一部と積極的に認める考え方もあると思います。

こと「言葉とジェンダー」といった問題系の場合は、言葉に性差が反映されるといったスタティックな分析だけではなく、言葉に刻み込まれたジェンダーバイアスを喝破して少しでも社会的な公正さを獲得していこうという動きが出てきます。

かもがわ出版|寿岳章子 女とことばと憲法と
kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki

寿岳章子氏は(日本語学としては)戦後の早い段階からこの問題を積極的に扱い、発言してきた研究者です。この本はその寿岳氏が残した日記を手がかりに、研究と生活とを浮き彫りにした伝記で、大変読み応えがありました。言葉をスタティックに扱いながら、しかし社会を変える力を持つ存在としても扱う。そのパワフルな進み方に舌を巻きます。

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