コロナ前から読み進めていた、篠田謙一『人類の起源』を読了。これは2023年の新書大賞第2位に相応しい新書だと感じます。
サブタイトルは「古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」」とある。これまで人骨化石に基づいた、形質的な手法から描写されてきた人類史を、DNAから組み立て直すという一冊。新書なの?という濃密さ。
古代人のDNAを調べる手法は80年代に始まるようだが、「次世代シーケンサ」という手法が2006年に実用化されてから、核のDNA情報全てを読み取ることができるようになって、精度の高い研究が飛躍的に進んだらしい。母系ルーツの分かるミトコンドリアDNA、および父系が分かるY染色体DNA、両方をうまく使ってDNA配列の類型的特徴をグルーピングした現代人のハプログループと、古代人のDNAを比較しながら離合集散のルートがかなりな程度明らかになっている。
2-30万年前にホモサピエンスが誕生して、6万年前ごろにアフリカを出発してというストーリーの具体的な肉付けがDNAを根拠として、これでもかというほどに描かれていて、良質の満腹感が得られた。
すごいなと思ったのは、2022年の出版なのに2021年の知見をたくさん入れ込んでいること。進歩著しい領域なのだろう。著者の姿勢に感服します。(1/3)