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ところで釘貫先生が『日本語の発音はどう変わってきたか』という本を出された。未入手だが、上代特殊仮名遣いに触れるところがあり、国語学では伝統的な説明によっていて8母音説を採っているという。私も日本語史の授業では国語学で広く受け入れられているこの説を採る。しかしこれが言語学研究者から鋭く批判されている。比較言語学に基づく知見からは6母音説が定説であり、8母音説は旧態依然とした国語学の悪弊であるというような切り口である。

言語学研究者による国語学批判は、辟易とすることも正直ないではないが、真摯に受け止めなければならないと思う。国語学は国語の学でもあって、大学世界では国語の教員免許を出す課程に必須の学問領域でもある。だから暗黙裏に国文学の問題設定、文献に記された言葉をその時代的な出発点に置く、ということを共有している。いわば国語教育と密接な関係を持ちながら存立しているわけだから、国文学の出発点にある記紀万葉を(せいぜい考古学的出土物を加える)上代語の根幹に置けば、描かれる知的世界も当然その限界のもとにあるわけだ。(3/n)

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