パンのレシピを読み漁るようになって、ジャーゴンもずいぶん理解できるようになってきた。
二次発酵のことを「ホイロを取る」などと言うようですね。最初はなんだそれは、と思っていましたが。ここに、panpediaなる百科事典がありまして、「ホイロ」が立項している。
https://www.panpedia.work/entry/hoiro
もとは二次発酵を行うための発酵器を「ホイロ」と言っていたと。これは唐宋音の「焙炉」ですね。日本国語大辞典@JapanKnowledgeによれば、「木の枠(わく)や籠(かご)の底に厚手の和紙を張り、炭火を用いて遠火で茶の葉や薬草、海苔(のり)などを乾燥させる道具。ほいろう。」とのこと。意味用法が拡張して、パンの二次発酵にも使うようになったのでしょう。
次世代デジタルライブラリーに1939年刊『製パン教程』なる本があって、「第四節酵母の取扱生麵生麵の膨脹焙爐上の注意」であるとか、「パン型に型詰され、或はてんぱんに型取られ焙爐に移される」などと記載されている。1929年刊『農産製造学』なる本にもパンの製法が記されるが、「焙炉」は使われていない。古くは茶を観想させる用法はあれど、パンには用いられていないようです。
いかにも現代的なパン作りの話題に古色を湛える表現が出てくると、不思議な感じがしますね。