#カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、博麗神主と、しゅうまい君のバカンスの話]
Misskey.ioのサーバーの街は彼岸をすぎても夏と秋を反復横跳びして、頭痛持ちのミスキストたちの自律神経を虐め続けていた。ローカルタイムラインの表通りに流れて来るホログラムのノートにも体調不良の悲鳴が散見され、歩道を行くミスキストたちはそれに向かって「ナデナデする手」のリアクションを投げ込んでいた。
表通りに面したカフェテラスに注ぐ真珠色の太陽の光は先月よりも柔らかくなっていたが、風はまだまだ汗ばむ湿度を含んで、.ioの翠色の空の下、私にアイスコーヒーを注文させたのだった。
そんな昼が西に追いやられて、暗い碧色の空にエメラルドの月が昇り、.ioの夜になる。繰り返し表通りにリノートされる特務機関NERVのニュース速報トゥートによると、自民党の新総裁が決まったという。ビル群に掲げられた大型ビジョンに映し出されるノートには、政治のお気持ちノートよりも、自分が新総裁に選ばれた際のマニフェスト大喜利とか、新しい総菜のメニューなどが目立った。
新総裁ももちろん大事だが――私はカフェテラスの椅子にもたれながら、表通りの車道を流れていく、また別のノートに目を向ける。
東方シリーズの原作者である、博麗神主ことZUN氏のXアカウントが乗っ取り被害に遭い、改めて新設したアカウントも凍結され、やむなくBlueskyのアカウントで情報を発信していくことになったらしい。ネットメディアでも記事が載り、そのリンクを貼ったリモートサーバーのトゥートに向かって、私も手のひらの中で練り上げた「オヨー(;o;)」のリアクションを投げたりしていた。
そのとき、表通りの歩道の向こうから、颯爽と歩いてくる女性の姿が見えた。ブラウンのショートボブに丸眼鏡のそのひとは、Aラインのワンピースにジャケットを羽織って、パーソナルカラーのグリーンを鮮やかに着こなしていた。
女性は私の座っている席に近づいて手を挙げると、朗らかに微笑んでみせた。
「やあやあ小林素顔、今日はまだ元気そうだね」
彼女のことを私は「ミスキーガール」と呼んでいる。私が勝手に呼び始めた名前だったが、最近は彼女も受け入れたようで、私がそう呼んでも怪訝な表情は見せなくなった。
「ごきげんよう、ミスキーガール。君も元気そうだね」
私が言うと、ミスキーガールはクスっと笑って、テーブルを挟んだ私の目の前に座った。
「時代は変わりつつあるな、という思いを今日もまた強くしたという、それだけ」
そう言って、ミスキーガールはフロアスタッフのメイド服の子にカフェオレを注文する。私はそのとき、とても中途半端な感情を湛えた表情をしていたと思う。
「どうしたの、そんな顔して」
ミスキーガールに指摘されて、私は首を傾げてしまう。
「Twitter、ああ、Xね、X、もういっかいちゃんとアカウント運用しようと思って」
「運用?」
私の言葉に、ミスキーガールは露骨に眉間に皺を寄せる。
「そう、運用。クリエイターとしてなんらか作品を宣伝するために、やっぱりまだXは必要な情報インフラなんだと思う。もちろん、生活の場としてのMisskeyは本垢としてなんだけど、やっぱりまだ、そうまだ、Xに改めて場所を作りたいと思ってるんだ」
テーブルの水滴だらけのアイスコーヒーに視線を落としながらそう言って、私が顔を上げると、ミスキーガールは深いため息をついて、言う。
「Xで宣伝する作品は、もう用意してあるの?」
その言葉に、私は黙って首を振る。
「Blueskyは? ZUNさんもあっちに移るって言ってるみたいだし」
ミスキーガールがそう言うって、カフェオレをひと口、そして鋭い目つきで私を睨む。私は気圧されそうになりながらも、言葉を選びながら、ミスキーガールに返す。
「Blueskyにもアカウントはある。そちらも並行して運用するつもり。――別にMisskeyやFediverseを見捨てるわけではない、むしろ無いと生きられないくらいだ。でも現状、『ビジネス』とか『宣伝』のツールとしてのXは、『本土』なんだよ、私たちの。Fediverseはまだまだ『避難所』の役割が強い、しゅうまいのように、多くの皆が『バカンス中』なんだ」
私が言うと、ミスキーガールは目をつむり、腕を組んで、深く息を吸って俯いた。目元に少し光るものが見えて、私は怖じ気づいてしまう。
「大丈夫、私はMisskey.ioのお陰でちゃんと『小林素顔』になれたんだ、これからもMisskeyにはお世話になる。君だってXのアカウントは残してあるだろう? Xの復帰は私の挑戦なんだ。理解してくれないかい?」
私が言っても、ミスキーガールは返事をしない。そのとき、メイド服の子がカフェオレをテーブルに運んできた。するとミスキーガールはバッグからスマホを取り出して、メイド服の子の手を取った。
「お会計」
ミスキーガールの囁くような小声に、メイド服の子は腰のホルダーに止めてあった端末を取って、ミスキーガールのスマホのQRコードを読み取った。決済の音が鳴り、メイド服の子がテーブルを離れると、ミスキーガールは席を立って、そのまま歩道の人の行き交いの中に消えて行ってしまった。
まだ湯気の立つカフェオレを目の前に、私は頭を抱えながら、テーブルに突っ伏してしまう。
「何とかならんのか、なんとかならんのか……」
痺れるような頭の痛みが全身に広がっていくような気がした。私たちミスキストの多くは今だにXから離れられずにいる。TwitterからXに変わったあの場所の存在はとてつもなく巨大で、しかしそれはいま大きくバランスを崩している、それなのに、離れられずにいる。
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは金曜の夜を迎えて騒がしく、ミスキストたちは少なからず浮かれている、その中で、私は目の前で冷めていくカフェオレに対して何もできないまま、身動きできずにいるのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#MisskeyWorld
コロナの時のスナップ写真集をちょっとメンテした。
末尾のコメントがあまりにいい加減だったので書き足した。
https://sandii-bridge.sakura.ne.jp/photoalbum/ekibyosenpu/index.html
Xに書いてきたやつ(1)
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https://x.com/noellabo/status/1838865391147508043
関心を持たれると面倒な人とか、公式とか、ブロックでみえないようにして、知られず、無関心でいてもらいたい相手、いますよね。
MastodonやMisskeyでは投稿毎に『公開』と『フォロワー限定』を選べるので、柔軟に運用できますよ。
ネタバレや刺激的な内容を伏せられるCWという機能も標準装備です。
とにかく人が多いところで活動したい、という人には不向きですが、
ちょうど良い距離感を保ち、商業主義に妥協せず、なにものにも邪魔されずに活動できる場所を探している場合は、MastodonやMisskeyをオススメします。
流行り始めて7年半ぐらい経ちましたが、成熟した良い空間になっていますよ。
Instagramが好きなら、Threadsも良いと思います。
Twitterっぽくてシンプルな、Blueskyも人気ですね。
ひとまずXのアカウントはそのままでいいので、他のSNSを使ってみるといいですよ。複数の場所を確保しておきましょう。だいぶ安心ですよ。
#fedibird の、「自分で作るタイムライン」感がとても良い。
VergeからXのシェアボタンが消えThreadsになったと🤔 [参照]
fedibird.com を根城にしています。
BlueskyはBridgy Fedを使って再投稿しています。
写真系。