柚木麻子「BUTTER」読了。(元ネタのネタバレあり)
週刊誌女性記者が獄中の女性の独占手記を得ようと何度も面会し指示に従ううち、バターをとっかかりに食の悦び見出し、彼女の周りで不審死遂げた男たちと同じく心の隙間にすっと入り込まれ思考も行動も従属させられていき罪状さえ疑うようになり、恋人や友人ともぎくしゃくするも周りの忠告支えで理性を取り戻す。改めて対峙したものの彼女の方が一枚上手で計り知れぬ衝撃を公私ともに受けながらも、築いてきた人間関係の助けもあり、石にかじりついてでも簡単にはへこたれない強さ得るまで成長し前向きなラストまで突っ走る、料理×世間体から外れた者への矛盾と弱さ鋭く突いた社会派小説の、タイトル通りバター満載で胸焼けするほど読み応えがある読書体験でした!
木嶋佳苗事件モデルにしただけあり理解されない問題の孤独に付け込まれ理解者のように振る舞われねっとり搦めとられ操られていく過程が読者も違和感なく受け入れられてしまいそうなほどでリアルすぎて怖い…。
どれも出てくる料理美味しそうなのだけど食欲は性とも不可分に結びつき彼女にまとわりつく不可解な魅力が毒のように全身に回ってがんじがらめになった気分になり次第に料理の描写に嫌悪感しか感じなくなってしまった…。