アンナ・カヴァン「眠りの館」読了。
焦点が当てられていた現実が次第に遠景へと退き、かくりよに一時身を浸すような場面に目まぐるしく移行、パステルカラーに繊細な色彩に彩られたイマジネーションが爆ぜ、チリチリとそこかしこに散らばり滲む。
乞うても一顧だにしない母は通り過ぎるばかり、父にも振り向いてもらえず、周りにおずおずと伸ばした手をはねのけられ自らをも拒絶し、夜の世界で安らぎを得ながらも昼の輝く世界に居場所を求めずにいられない、本をよるべとする孤独な少女の顔をのぞかせる。
かくて幸福な夢想で閉じる物語が彼女の孤独を一層際立たせる幻想味溢れる自伝的小説、とても良かった。
オススメ!