発掘したジョセフ・ノックスのマンチェスター市警エイダン・ウェイツ三部作感想 

ジョセフ・ノックス「堕落刑事」
崖っぷちの刑事がドラッグ絡みの悪評利用し麻薬組織への潜入捜査だけでなく家出した大物政治家の娘の動向探るうち影の英国の病巣暴き出す。行きずりの恋人探す小心者が窮鼠猫を噛む強さ見せたのちやるせない哀切さ極まる結末が余韻残す…。
一つ一つの場面が映画のワンシーンのように印象に残る。人が死ぬ場面ですら影がいつまでも後引き脳内で場面がちらつく。警察に味方がいない中、登場場面が少ないながらも児童養護施設で一緒に育ったドラァグクイーンの幼なじみが主人公の弱さもすべてわかっていて助けてくれる良いキャラで強烈な存在感。
各章のタイトルがジョイ・ディヴィジョンの曲名なところから、イアン・ランキンと通ずるところがある。ただし、おもいっきりダークにして、周りは保身に汲々してるし、感傷的なジャンキーで熱血感も正義感も強さも持ち合わせていないけど、事件にはがっつり噛みついて離さないところがリーバスっぽい。
だけど、唯一良くないのがタイトル。これじゃ中年向けのハードボイルドアクション小説みたいな内容と勘違いされる…。含みがいっぱいあって、読了後、はっとさせられ、余韻がさらに深まる原題のセイレーンのままでよかったのにな…。

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発掘したジョセフ・ノックスのマンチェスター市警エイダン・ウェイツ三部作感想 

ジョセフ・ノックス「笑う死体」
ホテルで見つかった笑い顔浮かべこと切れた死体。身元明らかにすべく関係者周辺調べるほど混迷増す事件の真相と犯罪の片棒担がされる少年の話が一つになったとき脆さ抱えた主人公に優しさ降り注ぎ心洗われるラスト…!
前作がらみの件でかろうじて首の皮がつながり、周りからつまはじき者の主人公。ハードボイルドのように乾きながらも、感傷的で叙情的な筆致で、危うくたわむ足元をなんとかバランス保ち、優しさ、弱さを強さへと転じさせる彼の姿を描く。この作品は彼の過去からの解放と少しの成長の物語でもある。
主人公の相棒のサティは、世界の終わりの妄執に囚われ他人を貶めるのは蜜の味な下衆男なんだけど、実は切れ者で、物語が進むにつれ、だんだんと印象が変わってくる。彼に限らずいけ好かない登場人物ばかりなのに一筋縄ではいかない新たな面が出てくると、不思議とそんなに嫌でなくなる。
中盤、主人公が決断する、とある場面にひりひり…。でもこれはある意趣返しの伏線になり、ラストにもう一つさらに意趣返し加わり思わず快哉叫ぶ…!伏線きちんと貼り主人公がラストに犯人指摘する名探偵さながらの推理とケレン味のある真相は本格ミステリとしての面白さも有るノワール

発掘したジョセフ・ノックスのマンチェスター市警エイダン・ウェイツ三部作感想 

ジョセフ・ノックス「スリープウォーカー」
【自分は真犯人でない】と言い遺し何者かに殺された一家殺人犯。捜査通じ更なるどん詰まりのなか過去の因縁から命脅かされ何度も逃げようとし大切なものが枷となるもあがきまくりすべてから解放される主人公のオープンエンドが胸を衝く…。
映画のワンシーンを静止画にしコマ送りにしたような場面から始まりノワール、某名作ハードボイルド連想させるような展開、再びノワールに戻り、過去が明らかになった後に束の間の心安らぐ場面からの主人公の弱さ転じて強さとなる選択が哀切すぎたけど絶望でなくわずかでも希望残すラストだと信じたい。
ミステリ的な面白さも抜群な今作だけでも楽しめるけど、彼を縛るしがらみ崖っぷちの状況、悪徳警官ばかりの周囲の事情、重要な役割果たす二人との関わりを楽しむためにぜひ一作目から読んでほしい。とくにサティは一筋縄ではいかない人物で、今作で明らかになる過去の事情で人物評さらに変わるはず。

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