『アンナチュラル』完走の感想
もともと科学捜査もの大好きなこともあり、一日で完走してしまった。個人的には一気に見るのが苦痛なくらいズシンと重い方が好きなのでちょっと喉ごし良すぎやしないかとも思うが、きちんと深みがありつつ軽やかなのがヒットの理由だろう。
テンポの良さとポップさ、巧みなストーリー、魅力あるキャラクターで飽きさせない。ミステリーとしての展開のうまさに加えて社会問題の織り交ぜ方が上手く、また作品全体を貫く価値観がとても新しくて優しい。作り手の真摯さが伝わってきて、ゆえにUDIラボのみんなをずっと見ていたくなる心地よさがある。
二人目の主人公と言っていい中堂の描き方が特に印象的だった。中堂のような"粗っぽさ"は、古くは男らしさとして称賛されたり、愛すべき不器用さとして甘やかされてきた。しかし本作において中堂の"粗っぽさ"やコミュニケーション不足はあきらかに欠落や幼さとして描かれており、時には中堂本人にとって重大な損失をもたらす。
でありながら、彼が反省して改心するような展開にはなっていない。つまり最後まで"いいひと"に回収されて周囲に同化してしまわない。中堂は一貫して、マスキュリニティという欠点を抱えつつも魅力的な人物として描かれている。この距離感が実に独特で興味深かったし、面白かった。