『虎に翼』戦争描写ふりかえり
第一話で登場した寅子が憲法を読むシーンは、ただそれだけで感動的だった。寅子がどんな人物でどんな状況にいるかわからなくても、終戦直後を思わせる背景だけで、彼女が憲法によって抑圧から解放されたように感じられるからだ。戦争は究極の抑圧であり、敗戦であろうと戦争が終わることは解放を感じさせる。
しかし『虎に翼』で戦時中の抑圧がどれだけ描かれただろうか。いろんなデティールをチラ見せするけど本体は結局なにも描かないままだった。
本来なら今日の放送で「すべて国民は法の下に平等であつて」のナレーションに被せて回想されるのは何より戦時中の様々な悲劇であるはずだ。でもそれは一切なくて女子部が最後に過ごした砂浜のシーンになってしまう。戦時中の悲劇が別に無いからだ。そして、急にどうしたのかと戸惑うほどに、寅子は学生時代の元気だった彼女に戻る。
結局、戦争については描けなかったんだな。それが作家の実力や意欲不足なのか、大人の事情的なことなのかは分からないけど。