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私が『虎に翼』の戦争描写に不満なのは、あれを見て物語の"奥"を深読みできるのはすでに知識があって日頃から戦争に関心のある人だけだから。そして、現在の日本においてそのような人はごく少数だから。
知識のない人があのドラマを見て、戦争の加害と被害をどれだけ理解できるだろうか。とてつもない飢えと暴力を想像できるだろうか。
TVドラマという大衆的かつ保守的な媒体だからこそ、しっかりと「声高に反戦を叫ぶ」ものを見たかった。
『虎に翼』のヒットは今時珍しく政治的メッセージをきちんと言葉にして発信したことが大きかったと思うのだけど、戦争に関して一切それをやらんのはなんで？てなる。
あらゆる人の人権が侵害されるのが戦争なのに「困っている人を救い続けます、男女関係なく！」と熱く語った寅子がひたすら戦争に適応しているのはなんなのか。当時だって戦争に疑問を持つ人はいたし、おおやけに反対して拷問された人だっている。寅子が女性差別に抗ったように、戦争にだって抗った人はいた。
みんながみんな、知らぬ間に抗いようもなく戦争に巻き込まれていったという描き方は日本特有の「自然災害のような戦争観」だと思う。