『コンクリート・ユートピア』ネタバレ:韓国映画における"災害"と日本人の感覚には大きな隔たりがある
韓国の歴史を考えると、植民地支配や軍事政権といった人間による悲劇が切実に記憶されている一方、災害は馴染みの薄い悲劇なのかも知れない。(近年は韓国も気象災害が多発しているけど)
そのためかディザスター映画自体がほとんど作られてこなかったし、2019年『白頭山大噴火』も本作『コンクリート・ユートピア』も、登場するのはファンタジックな"天変地異"としての災害だ。
しかし日本人にとって災害は非常に身近で現実的な問題であるため、今まさにこのタイミングで公開されたことを除いても"ツッコミどころ"を感じてしまうのは仕方ないと思った。被災の仕方もバリエーションが少ないし、なによりあんな倒壊した建物の近くにいたら危ないだろ!と身体感覚として心配になってしまう。
その感覚的な違いが一番明確に表れるのがラストだ。かつては高くそびえ立っていたアパートが横倒しになり、高さを失う代わりに分かち合い精神を象徴する"コンクリート・ユートピア"になるという寓話的な作りは上手い。上手いが、現実に似た状態の建物がいかに危険であるかを、今私たちは日々目にしているんだよな。だからどうしても「危ない!逃げて!」と思ってしまう。