知識は階級を超える!『スーパー30』  2019年ヒンディー映画
【あらすじ】貧しい産まれのアーナンドは数学の才能を持ちながらも金銭的な理由で挫折し、苦しい生活を送っていた。ある日、学習塾の教師に抜擢され一気に成功を収めるが、裕福な子どもだけが教育を受けることに疑問を持ち始める。そこで資材を投げうち、貧困層の子どもを無料で教育する塾を始めるのだが…。

キラキラしてないリティク・ローシャンの抑えた演技と、考え抜かれた脚本が胸を打つ傑作。
「王になるのは王の子ではなく、能力のあるものだ」というセリフが示す通り、社会の最下層を生きる子供たちが教育を通じて成長し、階級社会に打ち勝とうとする姿を感動的に描く。大規模なオーディションで選出された30人の子どもたちの存在感も素晴らしく、楽曲は強いメッセージを含んだ印象深いものとなっている。

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『スーパー30』楽曲Vidya いいところが多すぎて何から言えば…状態なので、曲を手掛かりに紹介。ネタバレなし。 

◆Vidya
本作はインドを代表する古代叙事詩『マハーバーラタ』を繰り返し批判的に引用している。血筋と王権を強調する物語を身分/階級制度の肯定ととらえ、「王になるのは王の子ではなく王になる能力がある者だ」と訴える映画だ。
社会の底辺を生きる子どもたちを鼓舞するように流れるVidyaの旋律は、神を称えるような厳かな雰囲気を持っている。しかし、歌詞が称えるのは神ではなくVidya(知識)である。
生まれに関係なく、だれでも手に入れることのできるVidyaこそが最強の武器。子どもたちは過酷な環境の中からVidyaに手を伸ばし、身に着けたVidyaで文字通り"戦う"のだ。

『スーパー30』楽曲 Basanti No Dance 

インドにおける英語の立ち位置は日本と大きく違う。高学歴富裕層でも大半の人が英語を話せない日本と違い、インドの裕福な家庭では幼い時から、ほとんど第一言語として英語を身に着ける。学校は基本英語、家庭内でも英語と現地語を併用するのが普通で、外国語というより国内言語の一つに近い。一方で貧困層はごく基本的な単語すらわからない。
こうした格差は『ホテル・ムンバイ』でも描写されているし、もっと英語に特化した作品としては『マダム・イン・ニューヨーク』が挙げられるだろう。インドにおいて英語は社会階層や教育レベルの証なのだ。
『スーパー30』冒頭で、貧困層出身の青年はこう話す。"私たちにとって英語は壁と同じです。金持ちと私たちの間にある高い壁。" 
子どもたちが、その高い壁を打ち破るBasanti No Danceは力強さと楽しさが詰まった最高のダンスシーンだ。
(こういう社会背景を多少知っていたので、ビームくん英語分かる節が結構不快だったのよね…)

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