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陳柔縉『高雄港の娘』(田中美帆訳/春秋社アジア文芸ライブラリー) 、とてもいい。
詳しくは書評に書くつもりですが、人間くさくキャラが立った魅力的な登場人物たちと、せりふの掛け合いが特にいい。
台湾語のせりふには“訳者が高校卒業まで育った愛媛南予方言を採用した”(P.353)そうです。
ノンフィクションライターだった著者の小説デビュー作かつ遺作だそうです。
shunjusha.co.jp/book/978439345

実在する故人をモデルにした長編なのに、だいぶ冒険小説で意表を突かれました。

日本統治時代に絶大な権力を持つ商売人“旦那様”こと王氏の7人の息子のうち、誰が後継者になるのか? 王の相談役で相続の立会人にもなり、王氏から密かにあるものを渡され、未亡人からも信頼されていた孫仁貴は、一部の息子たちにに恨まれる。はたして彼を密告し、台湾から出奔させたのは誰だったのか。王が孫仁貴に渡した物は何だったのか?
一方、孫仁貴の長女の利発な孫愛雪は、まずは台湾の日本人学校や日本企業で優秀さを見せ、夫ともに移り住んでからは日本で自らビジネスを構築していく……!

なお前半でわずかに、男性の同性愛が描写されます。ただし時代のせいで悲劇に終わります。

少し、黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』や、J.G.バラードの『人生の奇跡 J・G・バラード自伝』(『太陽の帝国』の元にもなった体験談)を思い出しました。大戦中にもかかわらず明るさ、自由さ、美しさがある子ども時代。

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