三木那由他『言葉の展望台』( 講談社)を読みました。分析哲学では言葉がどう捉えられ扱われてきたかという入門書と、エッセイや時事問題が絡み合った1冊です。
各章がたとえ話から始まり、テーマになめらかに誘導する親切な作りで、門外漢にはありがたかったです。
従来は発話者の意図に重きを置いた言説が主流だったそうなのですが、著者は「コミュニケーションというのは、いわば約束をすることなのだ」とそこに疑問を呈する立場です。
言葉は人間同士のキャッチボールで、キャッチャーが投手の意図をうまくキャッチしなければ、言葉によるコミュニケーションは公正に築かれないからです。
本書はていねいに公正ではないキャッチボールの例や、言葉が存在しない例、言葉が簒奪される例を教えてくれます。(続)

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(承前)私たちは誰しも、聞いてもらいやすい経験と聞いてもらいにくい経験(例えば年下である、下請けである)の両方を持つと思います。意見が通りにくい立場、信じてもらえない立場はまちがいなくありますよね。
発話のための言葉があるか、発話が聞き入れられるかという環境が公正でなければ、そもそも真に公正な約束としてのコミュニケーションは成立しません。いっぽうで発話者の側もキャッチされる言葉を選ぶ必要があります。
私にとっては、あちこちでうなずくことの多い本でした。多くの人に読まれますように。

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