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イリナ・グリゴレ『優しい地獄』(亜紀書房)も良かった。『物語とトラウマ』とかなり響きあっている部分があるように思う。
ルーマニア出身、青森在住の人類学者である著者による回想録的エッセイ。
社会主義時代のルーマニア、団地やきびしい暮らし、チェルノブイリ事件の影響といったショッキングな体験。ここではないどこかへ行き、自分ではない何かになりたい切実な望み。タルコフスキーの『ソラリス』やボルタンスキーへの愛なんかにも共感する読者が私の周りには多そう。
言葉選びや発想も面白い。たとえば著者は村の小さな、民家のようなボロ病院で生まれたのだが:
“母は「ここはあなたが生まれたところだよ」といつも、行きにも帰りにも言うが、「こんなところに生まれてどうする」と小さいころから思ってきた。”(P.5)

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