センシティブな則清とか加則加とか
「覚えてることをお互いに話したんですよ。主はどんな容貌だったとか、印象に残る出陣のことだとか。ほとんど忘れたと言っても本丸のサーバは覚えていましたし、審神者の名前も同様です。僕らにとってはかつての主の一人に加わった名前ですからね」
なるほどと清光は頷き、自分はどうだったかと記憶を探る。
本丸のサーバは思い出せる。主の名は……ぼんやりとしている。手元に名を書いた紙があるのに、靄がかかって文字が読めないようなもどかしい感覚だ。
「……俺、主の名前って思い出せないかも……」
愕然とする。当たり前に頭の中にいたし夢にだって見るのに、肝心の名前が出てこない。いらないと言われたことを思い出したくないと強く念じ過ぎたからだろうか。
「別にいいんじゃないですか。あなたが今会いたいのは主じゃないんでしょ」
言われてはっと顔を上げる。宗三は細く長い指をひらひらと振った。
「僕とへし切は主の名前でお互いを確かめましたけど、それが作法ってわけじゃないですから。他にもあるでしょう、いくらでも。第一——」
と言いかけて宗三は不意に口をつぐんだ。
「なに」
「いえ、別に」
「……ふうん」
追求しても無駄だろうと、清光は引き下がった。
センシティブな則清とか加則加とか
だが、居酒屋のテーブルに身を乗り出した清光を宗三は焼き鳥の串を持った手でしっしと追い払った。
「近いですよ」
「ごめん」
慌てて座り直し、もう一度さっきより控えめに上体を宗三の方へと倒す。近づいたぶんのけぞった宗三はあきれたように笑いはしたが、すぐにテーブルに肘をついて串に連なった砂肝をむしるように噛んで口の中へおさめた。
「同じ本丸にいたって、すぐにわかったわけ?」
「そこまではさすがに。思い出せると言っても記憶がはっきりしてるわけじゃないですからね」
その感覚は清光にも理解できた。自分はかつて刀剣男士だったという記憶はあれど、長く人として過ごすうちにそれは少しずつ薄れてきている。則宗のことは鮮明に思い出せたが、博物館や美術館で他の刀剣を見ても同じことは起こらなかった。
おかわりをしたレモンサワーのジョッキに浮いた水滴を指でなぞりながら、清光は唸った。
「確かにそーなんだよね……俺も今から十年前のことすらところどころしか覚えてないし、本丸でのことなんかさらにぼんやりとしか思い出せないもん」
それなのにどうやって、と水を向けると宗三は咀嚼し終えた砂肝を飲み下して三杯目のビールをあおった。
ひかきみの文句を書きたい
人間性についてはもうなんか「この脚本家はどうしようもねぇな」があるし、台詞回しに感じる違和感は「この役者さんあわねぇんだな私に」で諦めてるんだけどひとつ言わせてくれ
ものを書かずにいられない人間は大作書き上げたからって「書くことがすべてだったのに何もない」とか言わないんじゃなくて?????
ずっと書きたかったもの(……には到底見えなかったが……)を書き上げて虚脱状態になり、「あー、もう書くべきものが自分の中にないな」と感じるというのは長期連載終えた作家とかの口から聞くこともあるけど、「何かを書く」というのはあくまで手段であって目的ではないんじゃないの?
自分の中にある衝動が消えたことに焦燥や虚しさを感じるのはまだしも理解が及ぶが、「書いてる自分じゃない」が虚しさの原因って一体何?
センシティブな則清とか加則加とか
どうやらこのふたつが主流な意見のようだ。そして、
「実際再会したやつの話って聞いたことないし」
と言う事実は皆が承知してるらしかった。
「もう俺たち刀剣男士じゃないんだし、過去を思い出したところで今が変わるわけでもないじゃん」
というメッセージを読んだ清光は苦笑した。
確かにその通りかもしれない。過去がどうあれ今はただの人間だ。特殊な力があるわけでもなく、集まったところでできることなどないのだから。
しかしそれでも清光は思い出してしまったのだ。あのくそじじぃがいたことを。
知ったからには何かせずにいられない。だが、何をすればいいのかわからない。
焦りに突き動かされるようにして、清光はいろんなものに手を出した。趣味のサークルだの料理教室だの、モデル仲間の開くパーティーにもまめに顔を出したし、マッチングアプリにも登録した。いくつかは実を結び、清光は何人かの元刀剣男士とで会うことができた。
その中にひとり、清光の希望となった者がいた。
「僕、同じ本丸にいたへし切と一緒に暮らしてますよ」
宗三からそう聞かされた時、清光は我が耳を疑った。とうとう自分に都合のいい何かが聞こえるようになってしまったのかとまで思った。
メッセージへのお返事です!
奨学金か〜〜〜〜〜
私の家族は結婚してからも地道に払い続けて、けっこう長いことかけて完済してたな〜(院まで奨学金で行ったので)
もうひとりの家族も結婚後も返済を続けてた
どっちも結婚のときに問題?になったという話はしてなかったな
若いうちは生活が苦しかったっていう話はまあまあ聞いた
センシティブな則清とか加則加とか
則宗。
そのものではなかった。あのじじぃは何かとややこしい存在だったから。
だが、そこに飾られていた太刀は間違いなく、本丸でともに過ごしたあのくそじじぃの魂の一部だった。
思い出した瞬間、胸の中に大きな穴があいた。今まで自分がひとりぼっちだったことを、突然理解した。
清光はその日、博物館のショーケースの前で閉館まで過ごした。涙は出なかった。
街中ですれ違う元刀剣男士たちがわかるようになった。向こうは自覚があったりなかったりで、自覚があっても関わり合いを避けたがる者が多かった。同位体とも知り合った。どうやら加州清光はかつての同僚を懐かしむ傾向が強いらしく、最初のひとりと知り合ったその日にSNSのグループに招き入れられた。
そう頻繁にやり取りがあるわけではないのだが、同位体だけに同じ話題が新参者から出るのもお決まりの流れらしく、
「同じ本丸にいた連中って、わかるものなのかな」
と清光が尋ねると即座に返事が来た。
「今の所会ったことあるやつはいないけど、俺たちがお互いを別本丸の個体だって認識してるわけだし会えばわかるんじゃないの」
「同位体だからわかるだけで、他の男士はわかんないんじゃない?」
尸姦則清をふせったーから転載するわよ
閉じられた世界とか壊れた本丸に閉じこもってきよみつを山ほど顕現させて片っ端から折って一部屋に一きよみつ(死体)ってやっといて毎晩一部屋ずつ回っていくって言うやつ
朝まで添い寝して、ちっとも暖かくならない身体を抱いてがっかりして次の部屋に行く
当然やべぇことやってるわけだからガサ入れが入ってどっかの本丸のきよみつくんが後始末にくるんだけど返り討ちにあってバチボコに則清されちゃって(ソフトな表現)「お前さんはあたたかいな」とか言われてお気に入りに登録されて一室を与えられ閉じ込められちゃう
無数の死体と生きてるひとりの部屋を順繰りに回るのりむねくん
そのうち生きてるひとりが嫉妬に駆られて折れたきよみつくんたちを集めて全部燃やしちゃう
怒り狂ったのりむねくんは唯一生きてたきよみつくんを殺しちゃうんだけど、やっちゃってから我に返って呆然とする
どうしよう折っちゃった、ひとりだけあたたかかった大事な子だったのに
殺したばかりの身体はあたたかかった
ものいわぬ、でもあたたかいきよみつ
僕が欲しかったのはこれだ、って嬉しそうに笑ってハッピーエンド
まあそのあったかい死体もすぐ冷たくなるんですけど
BL GL大好き。ReSoner。
現在作品はxfolioに再録作業中です。
パスワードは「yes」です。