みんながんばってる…でもあんまり頑張らないでほしい…応援はしてるがそれは幸福の応援だと思って欲しい…
清光はおとなしく「そっか」と返事をすると、
「ちょっと俺出かけてくる」
と言い置いて尾鰭を大きく打ち振り潮の流れに乗った。
人だった頃は考え事などする暇はなかった。日々を息も絶え絶えに過ごし、次の瞬間にすべきことだけで頭がいっぱいだった。例外はあの、浴槽にいた美しい人魚——則宗のことだ——の傍らで過ごした時間だけだ。あの短い時間だけ、清光は美しいものを見、美しいものを聞く人間らしい存在でいられた。
だから清光は則宗の手を取ったのだ。
則宗は清光にとって、海の中で唯一頼れる存在であるという以上に、あの苦境にひとすじの光をくれた相手であり、その恩にどうにかして報いたいと望む相手でもあった。
「そりゃ、俺は人魚としては頼りないけどさ」
潮流に身を委ねて水面の光を見上げながら思わず呟きが泡となる。
「それでもちょっとくらい打ち明けてくれたっていーじゃん」
ふたたび鰭を振り、清光は静かに海の底へと身を沈めた。光が薄く差し込むばかりの砂の上に寝そべり、最初に則宗から贈られた真珠の耳飾りを指で揺らす。
はじめこそ戸惑った清光だったが、やがてそんな献身にも少しずつ慣れた。則宗は清光の感謝がなくとも献身それ自体が楽しくて嬉しくてたまらないようだった。
お返しに清光も、則宗にささやかな贈り物をすることがある。満月の日に海の上へ誘ってふたりきりで過ごしてみるとか、拙いながらも歌を歌ったりだとか、見つけた綺麗な貝殻を贈ったこともある。
ふたりは少しずつ、地上にいた頃とは違う関係を築いている。
だが、そんな穏やかさが、近頃の則宗の落ち着きのなさによって変わりつつあった。
「坊主。その、アレだ。最近はどうだ。調子は」
落ち着きなく尾鰭を揺らしながら尋ねる則宗に、清光は根気強く答える。
「おかげさまですこぶるいいよ。こないだあんたがくれたパックのおかげでお肌もぴかぴかだしね」
「そ、そうか! うはは! そいつは何よりだ!」
なお、この会話はすでに本日三度目である。
いったい何があったのか、あるいはあるのかと一度ならず聞いたことがある。しかし則宗は何故か顔を赤くして「大丈夫だ!」と言うだけだった。ちっとも大丈夫そうじゃないから聞いている清光としては釈然としないが、海の中で他に頼れる者などいない身にできることはない。
清光は人魚だ。
今は南の海に住んでいる。
生まれつき人魚だったのではなく、諸々あって人間から人魚にジョブチェンジして海で暮らすようになった。人魚になってからまだ半年足らずで、よって清光は人魚としてはまだよちよち歩き(泳ぎ?)すらままならぬ赤ちゃんのようなものだ。
なので、清光には人魚のことがわからない。
よって、自分を人魚に変えた張本魚が近頃やたらとそわそわしている理由にも、まったく心当たりがない。
則宗のそわそわは、だいたい今満月の月が半分ほどだった頃からはじまった。
則宗は清光に甘い。獲物の捕らえ方を教えてくれたわりに、毎日食事は手ずから用意してくれる。清光が好む美しい真珠や珊瑚や身を飾る海藻をまめまめしく運んでくる。美しい景色を見ようと手を引いて泳ぎ、眠るときは潮に流されぬようにと同じ岩陰で抱いてもくれる。
とりあえず部下の仕事今回引き上げた分はこのままやるとして、今後はちょっとスケジュール管理を私がやんないとダメっぽいな…
部下の担当案件には私に見えるやつと見えないやつ(今回溜め込んでで引き上げたのはこっち)があって、両方の優先順位は見えるやつが最優先ではあるんだけど、見えないやつは相手方からの催促がめちゃくちゃ来るというイヤさがあるもので…
なんか今からやだな〜私は八月下旬以降めちゃくちゃ面倒な案件が増えることがわかっていて、今はまだぎりぎりこういう手出しができるし細かい書類の修正指示とかを出していられるんだけど、秋とか年末からの繁忙期に同じようにしょーもないミス連発の書類リテイクを続けるのかと思うとこっちもげんなりだよ
部下の残業が増えてきてるようだったので仕事をごそっと引き上げたんだけど、回ってくる書類と今回引き上げたやつ見てると「数が多すぎて回らない」じゃなくて単に「仕事のスケジュール感を甘く見すぎて後回しにしたやつが火を吹いてるだけ」と言うのがわかった
しかしここの管理まで私がやるとなるとなあ………うーん…
BL GL大好き。ReSoner。
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