水晶公を解釈しようとしたとき、サブテキストのひとつに据えたのがラビンナード・タゴールの『ギタンジャリ』だった。
これは45番目に載っている詩
あのかたの静かな足音を 聞いたことはないのか?
あのかたは来る、ひたひたと、いつも来る。
どんな瞬間(とき)にも どんな時代にも 夜ごと日ごとに あのかたは来る、ひたひたと いつも来る。
わたしはさまざまな気分で さまざまな歌を歌ってきたが、歌の調べは、いつとても みんなこのように告げていた──あのかたは来る、ひたひたと いつも来る、と。
陽の降り注ぐ四月の花の香る日に、森の径(こみち)を通って、あのかたは来る、ひたひたと いつも来る。
雨の降りしきる七月の暗闇に、雷鳴とどろく雲の馬車に乗って、あの方は来る、ひたひたと いつも来る。
悲しみにつぐ悲しみのなかで、わたしの胸に迫り来るのは あのかたの足音、そして、わたしの歓びを燦然とかがやかせるのは、あのかたの御足の黄金の感触。
森本達雄・訳注の本が手元にある。
原文は繰り返しの部分が「He comes, comes,ever comes.」だから切実でとてもいい。
水晶公を解釈しようとしたとき、サブテキストのひとつに据えたのがラビンナード・タゴールの『ギタンジャリ』だった。
38番目のもいい。
あなたがほしい。あなただけがほしい。──こんな願いを いつまでも 心に繰り返すことを許してください。昼となく夜となく わたしの心をかきみだす もろもろの欲望は その髄までも偽りで虚しい。
光への希求(ねがい)を 夜が闇の中に秘めているように、私の意識の奥深くに こんな叫びが響いている──あなたがほしい。あなただけがほしい。と。
嵐が 力の限り 静けさに挑みかかりながら、なおも 静けさの中に究極の安らぎを求めるように、わたしもまた あなたの愛に抗いつつ なお このように叫び続ける──あなたがほしい、あなただけがほしい、と。
こっちは I want thee, only thee だからより切実かも。