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『ウィッピング・ガール』メモ⑼

〈あるセックスをアイデンティティとして生活するなか、条件付きシスセクシュアル特権を付与されるトランスセクシュアルが経験する極めて現実的な特権を説明するうえで、「パス」は便利な言葉だ。しかし、トランスの人たちがごまかしをして許されているような含みがある点で、非常に問題のある用語である。〔...〕この問題の核心は、「パスする」や「パスしている」が動作を表す動詞だというところにある。トランスセクシュアルが「パスしている」と言うとき、この状況に積極的に参加しているのはこの人だけ〔...〕という誤った印象が生まれるのだ。だが私は、その逆こそ真であると言いたい。目に入るあらゆる人を女か男にジェンダリングしたい無限の欲求がある一般大衆こそ、いちばん積極的で重要な参加者なのだ〉(206-207頁)

〈ジェンダー表現と外見が規範と異なる人をターゲットにするトランスフォビアと、出生時のセックスとアイデンティティとするセックスが異なる人をターゲットにするシスセクシュアル特権の違いを認識することは重要である〉(215頁)

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『ウィッピング・ガール』メモ。

〈トランスジェンダーの人たちに対する差別は伝統的セクシズムに染まっているので、トランス・アクティビストが二元制的ジェンダー規範〔...〕に異議を唱えるだけではとうてい太刀打ちできない。女であることは男であることに劣るとか、女性性は男性性に劣るという考え方にも異議を唱えなければならない。言い換えれば、トランス・アクティビズムは根本的なところで必然的にフェミニスト運動でなければならない〉(43頁)

〈「トランスジェンダー」という言葉が幅広い包摂性をもつのは、過去のフェミニストやゲイライツ運動から排除された多くの性的マイノリティに居場所を提供しようという意図の現れである。だがしかし、含まれる範囲が広すぎて、構成員の独自性がぼやけたり消し去られたりすることがよくあるのは、非常に厄介な点でもある。〔...〕〈トランスジェンダー〉という語と折りあいをつける最良の方向は、これはそもそも、セックス/ジェンダーの多様性に基づくあらゆる差別をなくすという共通の目標に向かって必死に戦う、いくつかの階級を団結させるための政治用語だと認識することである〉(51頁)

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カウアン・オカモトの「【告白】メディアでは決して語らなかった僕の今現在の正直な気持ちをお話しします。」
すごく共感した。こっちの本気をわかっていない人は今日も色々なかったことにしておもしろおかしくやってるみたいだけどね。そういう現実も生き延びないとね。youtu.be/zGotapV0COM

性的搾取をする人って自分と同じように興奮しやすい中高年男性を馬鹿にするようなことを平然とする。自分は違うと思ってるから実際とかけ離れたきれいごと語ってある程度のいいねを集められるのね、多分。

千葉雅也さんの書いていることと出発点が少し違うかもしれないけど「人にそうした方がいいよ」というにはものすごくパーソナルな事情とかその人の欲望とか様々なことを知っていてさらにそうしてみたあとのことを話し合える関係が大切だと私は思う。精神分析ではそこをすごく大切にすると思う。そうじゃないと「あなたの世界ではそうなのでしょうね」で終わってしまう。
twitter.com/masayachiba/status

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小沼理さんの忘れた頃に届くレター、よかったです。

4月の振り返り[忘れた頃に届く 2023年5月] remember-this.theletter.jp/pos

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大型連休初日は国立ハンセン病資料館の企画展「ハンセン病文学の新生面 『いのちの芽』の詩人たち」に行ってきました。間に合ってよかった。展示内容はもちろんのこと、この詩集の復刊ですよね。本当に素晴らしい仕事だと思います。無料ですし、ひとりでも多くの方に駆け込んでほしいです。5月7日まで。
nhdm.jp/events/list/4942/

【試し読み】『杉浦康平と写植の時代』|慶應義塾大学出版会 Keio University Press @KEIOUP note.com/keioup/n/nee722951866

【試し読み】栖来ひかり「忘れたの? それとも、思い出すのが怖い? ―台湾映画『返校』を観て考える、歴史への向き合い方」『日台万華鏡ーー台湾と日本のあいだで考えた』より|書肆侃侃房 web侃づめ @kankanbou_e note.com/kankanbou_e/n/na6e26c

知っている人には見せられない日記を書き続ける人の日記のやめどきの話が面白かった。みんないろんな仕掛けを相手に委ねながらコントロールできない自分をどうにかしてくれることを願っているんだよね。それがたとえ少し破滅的であったとしても。すごくわかると思いながら聞いてた。open.spotify.com/episode/78IyJ

ブログに正岡子規のノンフィクションのことを少し書き、千野千佳さんのnoteで渡部有紀子さんという俳人を知りちかさんも渡部さんも子規もやっぱりすごいなとブログを書いてたときには曖昧だった子規が日清戦争中記者として行っていた遼東半島金州にあるという句碑について検索したら現地で暮らしていた人が「文化愛媛」という機関紙に書いたこの句碑に関する文章を引用した人のブログとか金州に旅してこの句碑に出会った人の記事とか色々出てきて隙間時間にやるべきことが全く進みません。「文化愛媛」バックナンバーお願いしよう。こういうとき全部電子データになってないかなあとか思ってしまうけど電子データは読みにくいし地方の香りを旅気分で味わうのもいいよね。

蕎麦屋で日本酒を頼んだ。店主がその瓶を置いて、ある日ある客が「うちの酒が置いてある」というから誰かと思ったら蔵元の娘だったと。「世界は狭いね!」と店主。ほんとそうですね。お酒もお蕎麦もあてもとても美味しかったです。

「おーい、あれはなんだったんですかー」と怖いから遠くから、でも誤魔化すことを許さない形で聞きたいのだけどまた立場の弱いこちらがおかしいと言われてしまうし、生々しい話したくないからただただ我慢ってことありますよね。さっきnoteにも関連したこと書いたけどマルジナリア書店の小林えみさんの昨日今日のツイートで安心した女性は多いと思う。私も小林さんの体験とは違うかもしれないけど一部の人文系と言われる人たちの気持ち悪い依存と連帯にはうんざり。あったことはあったこと、搾取や孤独を軽薄に扱ったり事実をなかったことにするための知識や言葉なんてばらまかないでいただきたいと思うこともしばしば。でもそういうのはなくならない、ずっと続く。だったら自分はどうしよう、と考えるときに支えになってくれるツイートだった。

私の愛する句友、千野千佳さんの連載が始まりました!読んでね。twitter.com/KHorikiri/status/1

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最近は夜、仕事やイベントや帰省で忙しくて、お風呂読書ができてなくて、今日も疲れてそういう感じになれなかったので、「国際トランスジェンダー可視化の日」の3月31日から3日間無料配信されている『片袖の魚』をお湯につかりながら観ていました。

theatreforall.net/movie/kataso

三木那由他さんのこちらのブログも。

「最悪!」(『片袖の魚』) - あれこれ日記 mikinayuta.hatenablog.com/entr

泣きながら残りの仕事をするためにお菓子を買ってきたのに仕事は減らないままお菓子だけなくなってしまった。泣く理由が増えた。

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アイドルの子がエイプリルフールに合わせてレズビアンです〜とか実はトランス女子でした〜とかSNSで発表してファンをはじめそれを見たほとんど全員が「あ〜またエイプリルフールネタが来たね」と思っていたらいつまで待ってもネタバラシ修正が来なくて4月の2日になっても3日になっても4月が終わっても夏になってもネタでした宣言がないまま、という流れがそろそろあっても良い気がしている。

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ChatGPT(GPT-4)に、ケインズの『雇用、金利、通貨の一般理論』について問うてみたら、何度試してみても回答の途中でエラーが出る。

AIでも難しいんかいな、というので、ケインズが批判した「古典経済学」について訊ねてみたら、回答中でケインズに触れたあたりでエラーとなる。

むむむ。というので、別件で学術の歴史を網羅的に扱っている文献を言語はなんでもいいので教えてとお願いしてみたら、途中まで順調だったのだけれど、回答末尾でエラーとなる。

同じ質問をリクエストすると、先ほどとはちょっと違う文献を並べてきて、面白いなと思っていたら最後のところで躓いた。

ChatGPTが回答した文献リストを調べてみたところ、ほとんどは実在の文献だった。

「世界の科学史に関する包括的な書籍」として精神分析史のエリザベス・ルディネスコによる本が挙げられていて、そんな本も書いているの? と調べてみたところ、書名は実在のもので、著者は別の人だった。

『イランにおける科学技術の発展』も著者名が違っている。

何語でもOKと言っておいたのだが、ほとんどが英語文献で、上記のルディネスコだけフランス語だった。

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〈今、わたしたちには帰る日常がない。まるで、旅先にいるような生活だ。ご飯を作っても、仕事をしても、何をしていても。〔...〕でも本来、どんな状況であっても、以前と同じ時間にも、日常にも、戻りようはない。わたしたちは、ただ時の流れにのって進んでいくしかないから。
さまざまな人が、さまざまなかかわり方で、わたしたちの日々を形作ってくれていたことを思う。わたしたちの生活が今大きく変わろうとするように、多くの人たちのそれもほんとうは、少しずつ変わっていたはずだ。にもかかわらず、わたしはそのことを忘れ、あるいは目をつぶり、「変わらぬ日常」と思い込んできたのだろう。そのことに堪えきれずに見ていた幻想こそが、日常生活と言えるのかもしれない〉

「引っ越し」88-89頁より。

『さみしさは彼方』本当に素晴らしい本だったなぁ...。ことあるごとに、大事に開きたい一冊です。

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〈御所浦島は辺野古に米軍基地をつくるための土砂採取予定地になった。ぼくはこのことを知って、御所浦島にいったら聞こうと思っていた。Mさんの答えは「島が小さくなるのは嫌ですばい」だった。化石がとれるから反対〔...〕とか、米軍基地のためには反対とかではなく、島が小さくなるのが嫌だから反対だと言った。島が小さくなる、こんな目に見えることがぼくには想像できなかった。びっくりした。ほんとにそうだ。自分が暮らす愛しい島が小さくなる、かなしい。こんな当たり前の心をぼくは持っていなかった〉

「声」24-25頁より。

〈そういえば、水俣にも、天草にも、不知火海がみえる土には甘夏とカライモがたくさん生えていた。甘夏、は日本のどこにいってもきこえる声だ。カライモ、は違う。カライモ、という声は途端にぼくを水俣にも、天草に、不知火海に、引き連れていく。勝手だなあ。ここが、水俣だ、天草だ、不知火海だ、と思い込める、目を閉じれば窓の外は不知火海だ。なんて、よい名だ。カライモブックス〉

「さつまいもBOX」68頁より。

おふたりの「声」の使い方がとても好きで、なんだか新鮮でもありました。

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