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今月は300字小説書けました :blobcat_sprout:

タイトル「緑さす」
お題「椅子」
椅子がある、非現実的な情景。これはもしかすると小説ではないのかもしれません…でも物語ではあるんじゃないかなと思っています。

お題は「毎月300字小説企画」さんより…
twitter.com/mon300nov

『緑さす』

 その原っぱに一脚の椅子があることを知る人はいない。誰かに置き去りにされて、再び座られることもなく、長いことそのままでいる。
 つる草が背の格子に巻きつき花を咲かせた。小さないきものが座板の陰に潜り込み、ひとときの住まいとした。虫たちは脚をよじ登っては這い降りて、そこかしこにかじりつき腹を満たした。
 椅子は音も無く傾いだ。椅子はかさかさに乾いた。雨に晒されてひたひたと水を含み、風に揺すられてまた乾く。やがてはその身を腐らせ崩れ落ちた。
 いまや原っぱのひとかけらとなった椅子のことを、もう誰も知ることはない。原っぱには、遠く向こう側まで続く真新しい緑と、明るい日差しがさざめいている。

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