突然の夜の帳
ソファーに二人並んで座り、それぞれに本を読む。結婚する前から変わらぬ過ごし方だが、ナナリーが夜は子供になるのでその時間が増えた。
突然頭に重みを感じ、また甘えてきたのかとナナリーは本を閉じる。サラサラの金の髪が顔にかかりくすぐったい。邪魔だと引っ張ろうとしたが。
「うわぁ!?」
その前に、頭が膝の上に落ちてきた。長い髪で顔が隠れているので見えないが、聞こえてきたのは寝息で。
「ね、寝てる?」
返事はない。ナナリーもつい小声になってしまった。別に寝顔が珍しいわけではない。アルウェスの方が寝起きは悪いし、人を抱き枕にして眠るのが好きで困るぐらいだ。しかし迂闊に根落ちることはなかった。
(……疲れてる?)
小さな手でそっと髪を撫でる。見えた顔は心なしか顔色が悪い。夜の時間を空けるように昼に仕事を詰め込んでいると聞いているので無理をしているのだろう。睫毛が長いなとその先を触れても、少し目蓋が震えたぐらいで起きる様子はない。もう就寝の支度は済んでいて、自分達が起きるまでは呼ばない限り使用人が来ることもない。起こさなくてもいいだろうとナナリーは頭を撫で続ける。
一時間後にアルウェスが起きた時には足が痺れてしまい、アルウェスから謝罪という名の甘やかしのフリをして甘えられる羽目になった。