『オッペンハイマー』まわりの原爆に関するmemeにも反吐が出るが、これを批判する言説もまた原爆の被害者は日本人だけでないということを無視したものがとても多くて、あっちにもこっちにも踏まれて疲れてしまう。
核実験(先住民やラテン系の多い地域で行われた)や日本への原爆投下という、被害者が数十万人単位で存在している凄惨な史実を『オッペンハイマー』が雑な手つきで扱っているのは、被害者の多くが非白人であることと無関係ではないと思う。本作が被害者にフォーカスせず非白人のキャストがほぼいないことは事実であり、これは厳しく批判されるべきだが、その批判の際に他の被害者の存在を軽視しないでほしい。被害者は日本人だけではない。

「原爆は、国籍や民族の区別なく、あらゆる人々を襲いました。当時の広島市は日本有数の軍都。市内には、朝鮮半島から来た多くの人々をはじめ、台湾や中国大陸から来た人たち、ドイツ人神父、亡命していたロシア人家族などが住み、原爆の犠牲になりました。」
原爆は国籍や民族の区別なくあらゆる人々を襲った - NHK広島nhk.or.jp/hibaku-blog/hibaku75

核を批判的に描いているから『オッペンハイマー』は名作だの深いだの云々と欧米メディアが絶賛しているが、「核に批判的」なんてのは当たり前のことである。作中に被害者の表象がないことはすでに批判されている。核を作った白人男性だけにフォーカスし、核の被害者は姿も声もなく、いわゆる"両論併記"さえもしていないのが『オッペンハイマー』であり、これは到底受け入れられない。

オッペンハイマー氏による核実験で居住地を奪われ、被爆し、そして何の保障もされなかったネイティブアメリカンとラテンアメリカンの人々については、こちらのポッドキャストが聴きやすかった。

CHINGONA HISTORY with ALISA LYNN VALDES open.spotify.com/show/5qaXk1mJ

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作中には「オッペンハイマーが広島への原爆投下をラジオ放送で知り、その後に被爆地の実態を聞いて苦しむ様子が描かれ」ているらしいが、非西洋(日本/アジア)にいる実際の被害者を差し置いて、その被害を引き起こした白人男性が苦悩する姿を見せるのって、「被害者ヅラ」の最たるものだと思っている。
圧倒的マジョリティである白人男性(主人公)が非白人を殺害することは、悲劇的で同情の余地があるものとして扱われるのは、『オッペンハイマー』に限らずハリウッド作品あるある。本当に反吐が出るよ。

米「原爆の父」の伝記映画公開 広島・長崎の惨禍、描写なく | 2023/7/22 - 共同通信 nordot.app/1055288785714152341

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