東京の水族館で行われていたある実験の最中に、研究員が意識を失う事故が発生。京都でも実施予定だった実験も中止の連絡が入る。その内容は、「ペンギンの脳に特殊な装置で接続し、彼らが仲間とどんなコミュニケーションを取り、どう世界を見ているか調べる」ものだった。
好奇心に負け、翌朝撤収予定の装置を勝手に使い、水槽のペンギンと接続した研究員。しかしペンギンの精神はあまりに異質で、あまりに広大だった。そう、ペンギンは装置に使われているのと同じ脳の作用で、巨大な集合知性と化しており、複雑な個体間関係も、生存に伴うひとり芝居でしかなかったのだ。
驚愕する研究員だったが、好奇心に負けた彼の脳はネットワークの一部として取り込まれる。いつしかこの地球上で最も繁栄している種、ヒトという種全体をネットワークに取り込むために…。ひと月後、飼育員見習いとなった元研究員は、ペンギンの世話が上手だし懐かれているとして正規採用を打診される。
「この子達とは、なんだか通じ合うものがある気がしますね」と、ペンギンたちの世話をしながら笑みを浮かべる彼。水槽の片隅にあったペンギンの相関図は今年の分に張り替えられ、そこには彼の写真も貼られ、ペンギンとの相関を示す矢印まで表示されていた。 まるで群れの一員のように。