Suzuki @Suzuki@fedibird.com

私がアメリカに来た80年代後半というのは日米自動車摩擦や貿易不均衡の真っ只中だった。

通った大学には2つキャンパスがあり私はアジア系難民で溢れているダウンタウンのキャンパスの学生センターでバイトしてた。郊外のメインキャンパスにお使い頼まれて行ってみるとそこは別世界だった。白人の学生たちが日本の国旗を燃やしウォークマンを壊して日本製品の非売運動を訴えるデモが行われていた。横を背筋が凍る思いで通り過ぎている途中「キミは何人なんだ？ジャップか？」と聞かれた。怖かったので「違うよ中国人だよ」と答えた。
そのまま学生センターに行きさっさと用事を済ませてダウンタウンのキャンパスに戻った。しばらく近寄りたくないとボスには伝えた。

数日後、駐車場で私の車が放火された。ガソリンのついたタオルをタンクの入り口にかけて火を点けたらしくすぐに発見したセキュリティが消化器で消してボヤで済んだのだけど大学警察に色々聞かれた。私はすぐにお使いに行った時に私に何人か聞いてきた男の子の顔が浮かんだ。あのあと彼は学生センターで私が別キャンパスで働いてる日本人だと聞いたのではないか。ジャップがジャップカーに乗りやがってと嫌がらせの放火したのではないかと思ったけど、警察に言わない方が安全だと判断し余計なことは言わなかった。

しばらく顔馴染みのセキュリティが講義やバイトの後に車まで送ってくれた。ボヤで後ろが真っ黒になったけどバイトしたお金でやっと買ったボロ車を手放す事はできずにそのまま乗った。

あの頃のデモで感じた集団の反日感情よりも現在の全国に点在するアジアンヘイトの方が怖い。ロックダウンが明けた頃に犬の散歩してた娘がコミュニティ内で後ろから来た車の運転手から「中国に帰れ！このウィルスめ！」と罵声を浴びせられ震えて帰って来た。以降結構長い間娘達は必ず2人で散歩に行かせた。今の方が80年代よりも銃で溢れているし、何よりも私に向けられるのではなく私が守るものに向けられるのは恐怖が1000倍くらい違う。

英語も上達したしそれと比例して根性もついた。
1000倍になった恐怖と戦わないと守るものを守れないし恐怖は無くならないので、理不尽な差別には断固として声を上げたいと思うし、こういう経験や思いを他の人がする事もそれによって受ける傷がよく分かるので受け入れ難い。

差別は無くならないけど断固反対します。